研究者メンバーの発言
なぜ「ヤングケアラー」は正しくて、「ビジネスケアラー」は誤りなのか
先程の「ビジネスケアラー」が和製英語で誤用だという話を投稿したところ、「でも、ヤングケアラーもカタカナ語だよね? そっちはいいの?」という趣旨の疑問をいただきました。良い疑問だと思いますので、その違いを整理してみます。
■ 先に結論を
働きながら介護する人を英語で言うなら、「working carer(ワーキングケアラー)」が正しい表現です。前回の投稿でお伝えしたとおり、国もこの言葉を使うようになっています。
そして、「ヤングケアラー」も「working carer」と同じく英語として正しいのに対して「ビジネスケアラー」は誤りです。その違いは、実は「ケアラー」ではなく、その前に付く言葉にあります。
■ 違いは「ケアラー」ではなく、その前の言葉
「ヤングケアラー」「ワーキングケアラー」「ビジネスケアラー」——後ろの「ケアラー(carer)」はどれも同じで、ここは問題ありません。carer は「介護・世話をする人」を指す、れっきとした英単語だからです (主にイギリス英語、アメリカではcaregiverが主)。
違いが生まれるのは、その頭に付く言葉です。young(若い)も working(働く)も英語として正しく、business(仕事・事業)は、この使い方では英語として成立しない——違いは、ただそれだけなのです。
■ ヤングケアラーとワーキングケアラー = いずれも正しい英語
「young(若い)+ carer」で「若くしてケアを担う人」、「working(働く)+ carer」で「働きながらケアする人」。どちらも意味がそのまま素直につながります。
特に young carer は、イギリスで生まれ、法律や公的な支援制度でも使われている確立した英語です。日本語はそれをカタカナに写しただけなので、英語圏の人に "young carer" や "working carer" と言えば、そのまま通じます。
■ ビジネスケアラー = 日本で作られた英語にならない造語
「business(仕事・事業)+ carer」。この用語を使った人は「仕事をしながらケアする人」のつもりだったのでしょう。しかし、英語では business と carer をこう並べても「仕事をしながら」という意味にはなりません。business という単語に、そもそも「仕事をしながら」という形容詞的な意味がないからです。
むしろ英語圏の人が business carer と聞くと、「介護を事業(ビジネス)として行う人」、つまり営利の介護事業者と受け取ってしまいます。無償で家族を介護している人を指したいのに、正反対の「お金をもらって介護する会社・業者」の意味になってしまうのです。
■ 以上をまとめると
・ワーキングケアラーとヤングケアラー = 正しい英語をカタカナにしただけ。英語圏で通じます。
・ビジネスケアラー=日本人が英単語を組み合わせて作った和製英語。英語圏では通じず、かえって誤解される。
同じ「〇〇ケアラー」でも、成り立ちはまったく違います。働きながら介護する人を指すなら、「ワーキングケアラー」を使うのが正確です