研究者メンバーの発言

仕事と介護の両立2026.07.12

なぜ「ヤングケアラー」は正しくて、「ビジネスケアラー」は誤りなのか

 先程の「ビジネスケアラー」が和製英語で誤用だという話を投稿したところ、「でも、ヤングケアラーもカタカナ語だよね? そっちはいいの?」という趣旨の疑問をいただきました。良い疑問だと思いますので、その違いを整理してみます。

■ 先に結論を

 働きながら介護する人を英語で言うなら、「working carer(ワーキングケアラー)」が正しい表現です。前回の投稿でお伝えしたとおり、国もこの言葉を使うようになっています。

 そして、「ヤングケアラー」も「working carer」と同じく英語として正しいのに対して「ビジネスケアラー」は誤りです。その違いは、実は「ケアラー」ではなく、その前に付く言葉にあります。

■ 違いは「ケアラー」ではなく、その前の言葉

 「ヤングケアラー」「ワーキングケアラー」「ビジネスケアラー」——後ろの「ケアラー(carer)」はどれも同じで、ここは問題ありません。carer は「介護・世話をする人」を指す、れっきとした英単語だからです (主にイギリス英語、アメリカではcaregiverが主)。

 違いが生まれるのは、その頭に付く言葉です。young(若い)も working(働く)も英語として正しく、business(仕事・事業)は、この使い方では英語として成立しない——違いは、ただそれだけなのです。

■ ヤングケアラーとワーキングケアラー = いずれも正しい英語

「young(若い)+ carer」で「若くしてケアを担う人」、「working(働く)+ carer」で「働きながらケアする人」。どちらも意味がそのまま素直につながります。

 特に young carer は、イギリスで生まれ、法律や公的な支援制度でも使われている確立した英語です。日本語はそれをカタカナに写しただけなので、英語圏の人に "young carer" や "working carer" と言えば、そのまま通じます。

■ ビジネスケアラー = 日本で作られた英語にならない造語

 「business(仕事・事業)+ carer」。この用語を使った人は「仕事をしながらケアする人」のつもりだったのでしょう。しかし、英語では business と carer をこう並べても「仕事をしながら」という意味にはなりません。business という単語に、そもそも「仕事をしながら」という形容詞的な意味がないからです。

 むしろ英語圏の人が business carer と聞くと、「介護を事業(ビジネス)として行う人」、つまり営利の介護事業者と受け取ってしまいます。無償で家族を介護している人を指したいのに、正反対の「お金をもらって介護する会社・業者」の意味になってしまうのです。

■ 以上をまとめると

・ワーキングケアラーとヤングケアラー = 正しい英語をカタカナにしただけ。英語圏で通じます。

・ビジネスケアラー=日本人が英単語を組み合わせて作った和製英語。英語圏では通じず、かえって誤解される。

 同じ「〇〇ケアラー」でも、成り立ちはまったく違います。働きながら介護する人を指すなら、「ワーキングケアラー」を使うのが正確です

この記事を書いた人
佐藤博樹 (共同代表)
Hiroki Sato

最新研究者メンバーの発言

2026.10.09
仕事と子育ての両立
月刊総務2026年11月号 “特集「子育てで辞めない」会社のつくり方”  活躍支援は組織全体で取り組むべき課題
“特集「子育てで辞めない」会社のつくり方”の中で、短時間勤務制度の課題についてインタビューを受けました。制度の運用では、業務の質は変えず業務量を勘案する、を基本とすること、制度利用者が中長期的な視点でキャリア目標を持つことが大事であること、利用者と同僚双方
詳しく見る
2026.09.28
働き方改革
<あなたの会社の働き方改革、「もう必要ない」と思っていませんか?>
取材記事です。<あなたの会社の働き方改革、「もう必要ない」と思っていませんか?>  このところ、「働き方改革」という言葉を以前ほど耳にしなくなった。働き方改革に対する疑問の声を聞くこともある。働き方改革には、もう取り組まなくてもよいのだろうか。この問いに、ワーク・ライフ・バランス
詳しく見る
2026.09.17
ダイバーシティ経営・多様な人材の活躍支援
佐藤博樹・武石恵美子編(2026)『ホワイトカラーの働き方・暮らし方:国際比較からみる日本の課題』(東京大学出版会)が刊行
佐藤博樹・武石恵美子編(2026)『ホワイトカラーの働き方・暮らし方:国際比較からみる日本の課題』東京大学出版会序 章 国際調査から日本の課題に接近する(武石恵美子・佐藤博樹)第1章 5カ国の雇用制度と働き方・生活のあり方――労働時間を規定する要因は何か?(佐藤博樹) Ⅰ 日本の
詳しく見る