研究者メンバーの発言

仕事と介護の両立2026.07.12

「ビジネスケアラー」という言葉が誤用であることの理解が大事に

「ビジネスケアラー」という言葉が誤用であることの理解が大事に

 

  働く人の仕事と介護の両立を議論する際に「ビジネスケアラー」という言葉を使う方がまだ少なくない現状があります。書籍のタイトルなどに使われる場合もあります。しかし、この言葉は英語としては誤りであり、経済産業省をはじめ国の最新資料でも使用をやめています。以下では、この言葉の問題点や正しい呼称を整理してみます。

  ■ まず、3つのポイント

① 「ビジネスケアラー」は和製英語で、英語としては誤りです。

② 英語で表現するなら「ワーキングケアラー(working carer)」が正しい言い方です。

③ この言葉を広めた経済産業省も、2026年3月の最新ガイドラインで使用をやめ、「働く家族介護者」に置き換えました。政府全体でも「ワーキングケアラー」が用いられています。

  ■ なぜ「ビジネスケアラー」は誤りなのか

 「business carer」は英語圏では通じません。carer は本来「ケアをする人」を指す言葉で、その頭に business が付くと「介護を事業とする営利事業者(介護会社など)」と受け取られてしまいます。つまり、「無償で家族を介護する人」という本来の意味とは正反対になってしまうのです。

    正しくは、次のように表現します。働きながら介護する人を的確に表す「working carer(または working caregiver)」が、国際的に通じる正しい表現です。文中で言い換えるなら「employees balancing work and care(仕事と介護を両立する従業員)」も使えます。

 つまり「business carer(ビジネス・ケアラー)」は和製英語であり、英語圏では用いられず、かえって誤解を招きます。

 ■ 経済産業省も使用をやめている

「ビジネスケアラー」という用語は、経済産業省が2024年3月の『仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン』で前面に打ち出したことで広まりました。

 当時のガイドラインには「家族等の介護に従事する者」に関して、「『ビジネスケアラー』『ワーキングケアラー』などと呼称されるが、本ガイドラインではビジネスケアラーの用語を主に使用する」と明記されていました。つまり、和製英語である「ビジネスケアラー」を、正しい表現の「ワーキングケアラー」と同義のものと誤解したうえで、あえて「ビジネスケアラー」の使用を選んだことがわかります。

 しかし、その後の2026年3月の改訂版では、変更の理由を説明せずにこの一文が「『働く家族介護者』『ワーキングケアラー』などと呼称、本ガイドラインでは『働く家族介護者』の用語を主に使用」と書き換えられたのです。本文・図表・脚注のすべてで「ビジネスケアラー」は「働く家族介護者」に置き換えられ、ガイドラインの本体からこの語は姿を消しています。

 つまり、もともと和製英語である「ビジネスケアラー」は、それを広めた経済産業省自身も現在は用いていない言葉なのです。(なお、ガイドラインの参考資料集は旧版のままのため、一部に「ビジネスケアラー」の表記が残っています。)

 ■ 政府全体でも「ワーキングケアラー」

 この動きは、経済産業省という一省庁にとどまりません。内閣府の政策研究などでも、働きながら介護する人は「ワーキングケアラー」と呼ばれています。国の公式な議論の場では、「ビジネスケアラー」はもはや主流ではないのです。

 ■ もう一つの、「ビジネス」という言葉の問題点

「ビジネス」を冠すると、どうしても正社員・中核人材が対象という印象になりがちです。しかし実際には、非正規雇用・自営業・パートなどで働きながら介護する人も数多くいます。他方、「働く家族介護者」や「ワーキングケアラー」は、雇用形態を問わない包摂的な表現ともいえます。「ビジネスケアラー」という言葉が誤用であることの理解が大事になります。

この記事を書いた人
佐藤博樹 (共同代表)
Hiroki Sato

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